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第7回KG-RCSP合同ゼミ

KG-RCSP合同ゼミは,異なる大学・学部の複数のゼミが集い,メンバーの研究発表と外部ゲストの講演を交えた「多様性と類似性の相乗効果」の場です.毎回,ゼミメンバーの発表に加えて,興味深い研究をしておられる 「今,この人の話を是非聴きたい+学生たちに聴かせたい」と思える研究者をお招きして講演もしていただいています.聴講・議論への参加は,ゼミ内外,学部生/大学院生/職業研究者等々を問わず,どなたでも歓迎します.

【日時】2019年7月31日(水) 13:00-17:30
【場所】関西学院大学西宮上ケ原キャンパス E号館102教室

第1部:ゼミメンバーによる発表

13:10-14:00 白井理沙子(関西学院大学小川ゼミD3)
直観的な道徳判断の基盤となる知覚・認知処理の役割の解明

従来の研究は,道徳判断に意識的な思考が重要であることを示してきた。それに反してHaidt (2001) は,道徳判断の主な源泉は情動処理を含む直観にあると主張した。しかし,情動が生起しない場合でも即座に道徳判断が下される場合もあり,直観的な道徳判断のプロセスには不明な点が多い。これを解明するためには,素早く判断を下すうえで重要な役割を果たす初期の知覚・認知処理において,道徳情報がどのような影響を及ぼしているのかを明らかにする必要がある。これまで多くの研究が,ヘビやクモのようなネガティブ情動と関連した刺激は早く気づかれたり,注意を方向づけたりすることを示してきた。道徳と関連した情動情報はこうした生物学的な情動刺激と同じように視覚的気づきや注意処理に影響を及ぼすのだろうか。今回の合同ゼミでは,連続フラッシュ抑制,クラウディング,高速逐次視覚提示法等によって道徳情報が知覚・認知処理に及ぼす影響を調べた研究を報告する。また,個人の倫理的価値観の多次元的な組み合わせからなる政治的信条にも焦点を当て,個人の政治的信条と知覚・認知処理の関連性について検討した研究も報告する。

14:05-14:55 大工泰裕(大阪大学社会心理学研究室D3)
詐欺の手口に関する情報が詐欺への抵抗に及ぼす影響

詐欺被害は長きに渡る社会問題の一つであるが、未だにその解決策は見つかっていない。最大の謎としてあげられるのが、なぜこれほどまでに典型的な手口が知れ渡っているにもかかわらず、被害が増え続けるのかということである。実際、警察庁の調査では被害者のおよそ7割の人々が手口を知っているのにもかかわらず騙されたと報告している。この謎を解明しなければ、広報啓発などの詐欺対策は効果を得られない。
発表者はこの謎を解明すべく、「詐欺被害の手口の情報をどう処理しているのか」、「得られた手口の情報をどのように使用しているのか」という二側面に着目し、研究を行ってきた。当日はこれらの研究結果を報告するとともに、今後の方向性についても議論したい。

15:00-15:50 中村早希(関西学院大学小川ゼミ大学院研究員・大学院奨励研究員)
複数源泉・複数方向の説得状況における説得の2過程モデルの適用可能性

複数人から異なる方向に説得される状況(例えば、選挙)は多々あるにも関わらず、これまでの説得研究では、1人から説得を受ける状況ばかりが注目されてきた。発表者は、複数人から異なる方向に説得される状況での態度変容プロセスの解明を目的とした研究を進めている。本発表では、説得の受容プロセスに関する主要なモデル(説得の2過程モデル)が、この状況においても適用可能であるかどうかを検証した実験について紹介する。具体的には、(1)説得者間で唱導方向が必ずしも対立しない場合(「AとBどちらが良いか」)と(2)対立する場合(「Aについて賛成か、反対か」)の2つの場面を用いて検討した。これらの研究成果について発表し、議論を行いたい。

第2部:招待講演

16:00-17:30 北村英哉先生(東洋大学)

【タイトル】穢れ忌避について

【概要】人の道徳基盤やモラルのあり方について、さまざまな議論が見られるが、清浄さ(purity)について、さらに詳細な研究が必要であろうことは、村山・三浦(2019)においても示されている。道徳基盤のあり方と共に、日本文化を十分勘案した清浄さを検討するにあたって、「穢れ」概念にも配慮し、新たな清浄志向/穢れ忌避傾向尺度を構成した。穢れに関わる実験刺激に対するネガティブ反応の検討など実験知見も交えながら、穢れ忌避傾向の検討結果を示す。


いずれの発表・講演についても熱心な討論が交わされました。北村先生、ご参加下さった皆様ありがとうございました。