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第11回KG-RCSP合同ゼミ

KG-RCSP合同ゼミは,異なる大学・学部の複数のゼミが集い,メンバーの研究発表と外部ゲストの講演を交えた「多様性と類似性の相乗効果」の場です.毎回,ゼミメンバーの発表に加えて,興味深い研究をしておられる 「今,この人の話を是非聴きたい+学生たちに聴かせたい」と思える研究者をお招きして講演もしていただいています.

第11回目となる今回は,学生4名が自身の研究成果や研究計画を発表するとともに,小林哲郎氏(香港城市大学)をお招きして行います.

【日時】2021年7月28日(水) 13:00-17:20
【場所】オンライン(Zoom)での開催


新型コロナウイルスの感染拡大が続いている状況を鑑み、今回の合同ゼミはオンラインで行います。参加には事前登録が必要です。

参加に際しては,以下のURLから事前登録をお願いします。登録承認後,「第11回KG-RCSP合同ゼミ確認」というタイトルでアクセス要領が書かれた返信メールが届きます。「ここをクリックして参加」をクリックするか、ZoomにアクセスしてミーティングIDとパスワードを入力して参加してください。

ご不明な点は稲増一憲(k-inamasu@kwansei.ac.jp)にお問い合わせください。

https://us06web.zoom.us/meeting/register/tZUlde2rrzIqGN3e-5lP8BFeu-mfADEKHDdz
ミーティングID:818 2431 9029


第1部:ゼミメンバーによる発表

13:05-13:45 水野景子(関西学院大学社会学研究科博士後期課程1年・日本学術振興会)
モデルに基づく社会的価値志向性の測定

本研究の目的は、社会的価値志向性 (SVO)の新たな測定法を提案し、再テスト信頼性と予測妥当性を検討することである。 自他の利得バランスに対する選好であるSVOの個人差は、実験ゲームや現実場面での協力行動の個人差を予測する。現在、SVOの測定には、連続量で利他性を測定でき、かつ向社会的SVOを平等志向と共同利益最大化志向に弁別できるSVOスライダー法 (SSM: Murphy, Ackermann & Handgraaf, 2011) が広く用いられている。しかし、SSMには、回答に一貫性がない回答者のSVOが向社会的SVOに分類されやすい (Bakker & Dijkstra, 2021) 問題や、利他性が不当に低く算出される問題がある。これらの問題は、SSMで仮定されている数理モデルが不適切なのではなく、SSMの課題および得点の算出方法が、仮定されている数理モデルのパラメータを算出するのに適していないことに起因すると考えられる。そこで本研究では、SSMで仮定されている数理モデルのパラメータを直接推定してSVO値とすることで、上記の問題を解決する。本研究の手法には、上記の問題を解決できるほか、向社会的SVOに分類される回答者以外についても、利他性と独立した指標として平等志向性を算出できる利点がある。3つの研究を行った結果、本研究で測定したSVOはSSMと同程度の再テスト信頼性を有し、インセンティブのある最後通牒ゲームの結果を予測できることが示された。

13:45-14:25 柏原宗一郎(関西学院大学社会学研究科博士前期課程2年)
自尊心IATの妥当性の検討 -課題の修正とモデリングによる検討-

本研究は、自尊心IAT (Implicit Association Test)の妥当性向上のために、課題修正とモデリングの観点から検討を行った。複数の先行研究において、質問紙で測定する自尊心とIATで測定される自尊心との間には、相関が低い又は見られないことが示されている(e.g. Ulrich, 2019)。単一の対象のみを用いるのSingle-Category IAT(SC-IAT; Karpinski & Steinman, 2006)では、相関が見られているが、日本人を対象とした調査では、これまで同様相関が見られていない。そこで、本研究は、参加者の名前やあだ名のみを自己の刺激語とするSC-IATを用い、質問紙で測定される自尊心との間に相関が見られるか検討を行った。結果、IATによって測定される自尊心得点と質問紙によって測定される自尊心得点の間に、相関が見られることがわかった。

(14:25-14:40 休憩)

14:40-15:20 温若寒(大阪大学大学院人間科学研究科博士前期課程2年)
オンライン脱抑制尺度の作成に関する研究

人間はオンライン世界に入ると、現実世界ではしないような行動をとることがよくある。このような現象について、Suler(2004)は「オンライン脱抑制効果」によるものとして説明している。しかしこれまでの先行研究では、オンライン脱抑制とは何かという構成概念が乱立しているという問題がある。概念的混乱により、人間のオンライン脱抑制の程度を的確かつ詳細に測定できるツールも開発されていない。そこで、本研究ではオンライン脱抑制の構成概念を再考・整理した上で、新たなオンライン脱抑制尺度を開発することを目的とする。まず、半構造化インタビューを行って、オンライン脱抑制についての経験を幅広く収集した。次に、著者が提案する新たなオンライン脱抑制の捉え方に基づいてインタビューの内容分析を行い、オンライン脱抑制尺度の予備尺度を作成した。現在は、予備尺度を用いた調査データを分析している段階である。本発表では、これまでの成果を報告するとともに、今後の方向性についても議論したい。

15:20-16:00 趙心語(大阪大学大学院人間科学研究科博士前期課程2年)
主観的社会階層がもたらすダブルモラルスタンダード―Wangら(2020)の追試的検討―

主観的社会階層が低い人は社会資源が少ないため利己的に行動し、自分より他者の利他行動を多く期待する(ダブルモラルスタンダード;Wang et al., 2020)。反対に、主観的社会階層が低い人は相互依存の生活環境に置かれるので利他的に行動する傾向があるという知見もある(Piff & Robinson, 2017)。本研究では独裁者ゲームを用い、そのどちらが正しいのかを検証した。351名の実験参加者が「自分条件」と「他者条件」にランダムに振り当てられた。自分条件の参加者は、金銭の分配場面で自分が受け手にいくら分配するかを回答した。他者条件の参加者はある架空の人が受け手にいくら分配するかを回答した。その結果、自分条件では主観的社会階層が低い人がより多くの金銭を分配した。つまり、主観的社会階層が低い人は、他者に期待するよりも「自分は利他的に行動すべきである」と考えていることがわかり、Piff & Robinson(2017)の説が支持された。

(16:00-16:15 休憩)

第2部:招待講演

日本語による講演です(The presentation will be given in Japanese.).

16:15 -17:15 Tetsuro Kobayashi (City University of Hong Kong)・Jaehyun Song (Kansai University)・Polly Chan (University of Oxford)

Preference falsification in authoritarianizing context: List experiments on the Hong Kong National Security Law

Preference falsification poses a threat to credible assessments of public opinion, especially in authoritarian societies. Extant studies have employed alternative question formats, such as list experiment, to elicit truthful responses and estimate the magnitude of preference falsification among critics of authoritarian regimes (e.g. China). However, little is known about preference falsification in “authoritarianizing” setting where political freedom and personal safety are being lost on an ongoing basis. By conducting two list experiments in increasingly authoritarian Hong Kong, we present a novel finding that loyalists, but not opposition members, significantly falsified their support for the Hong Kong National Security Law, a draconian institutional repression enacted in June 2020. Pro-establishment respondents in authoritarianizing contexts arguably anticipate tighter political control and believe that expressing politically “correct” through preference falsification helps avert political risks. Conversely, the absence of preference falsification among pro-democracy individuals might be explained by the psychological costs entailed by the suppression of their anti-government stances.