KG-RCSP合同ゼミは,異なる学部の複数のゼミが集い,メンバーの研究発表と外部ゲストの講演を交えた「多様性と類似性の相乗効果」の場です.毎回,ゼミメンバーの発表に加えて,興味深い研究をしておられる 「今,この人の話を是非聴きたい+学生たちに聴かせたい」と思える研究者をお招きして講演もしていただいています.聴講・議論への参加は,ゼミ内外,学部生/大学院生/職業研究者等々を問わず,どなたでも歓迎します.
第14回目となる今回は,センターメンバーが指導するうち大学院生3名が自身の研究成果や研究計画を発表するとともに,難波修史さん(理化学研究所)をお招きした講演を行います.
対面のみの開催とします.ご参加に際して事前連絡は必要ありません.ご不明な点は稲増一憲(k-inamasu@kwansei.ac.jp)にお問い合わせください.
【日時】2023年3月10日(金) 13:25-17:40(予定)
【場所】関西学院大学西宮上ケ原キャンパス 社202教室(社会学部棟 マップ中21番の建物)
13:25 センター長あいさつ
第1部:ゼミメンバーによる発表
13:30-14:10 温 若寒(大阪大学大学院人間科学研究科D1)
Development of a Chinese Multidimensional Measure of Online Disinhibition and Examination of Cultural Differences Between Japan and China
With the massive growth of Internet users, deviant behavior on the Internet has gradually become a serious social problem in China. Online disinhibition is considered to influence online behavior. This study involved the development of a multidimensional measure of online inhibition (MMOD) to assess the degree of online disinhibition of Chinese Internet users. In Study 1, we translated the Japanese MMOD into Chinese and determined the factor structure and items for a Chinese MMOD through confirmatory factor analysis. Its factor structure and item composition were the same as those of the Japanese MMOD. In Study 2, after confirming measurement invariance across countries, the degree of online disinhibition of Japanese and Chinese users was compared. Finally, we attempted to explain the high scores for online disinhibition in China from the perspective of environmental and cultural characteristics.(発表は日本語で行います)
14:10-14:50 柏原宗一郎(関西学院大学大学院社会学研究科D1)
1vs1の先制攻撃ゲームの意思決定メカニズムの基礎的検討
他者に対する先制攻撃は、個人間の争いだけでなく、紛争や戦争など集団間対立の引き金となりうる。本研究は、人が他者に対し攻撃行動を行うメカニズムを、先制攻撃ゲーム (Simunovic et al., 2013) を用いて検討する。先制攻撃ゲームでは、2人ペアになり、制限時間内にお互い「攻撃」・「防御」・「なにもしない」の3つの選択肢を選ぶ。参加者が合理的なら、お互い「なにもしない」のが最大利得を得られる方法であるが、他者から攻撃を予期するなら「攻撃」や「防御」が最適となる。本研究は、この先制攻撃ゲームをStrategy Methodを用いて実施した。加えて、利他性や平等性などの社会選好を考慮した数理モデルによる分析や、一般的信頼やZero-Sum Beliefといった心理変数との関連も探る。逐次手番の先制攻撃ゲームでは、BZSGや一般的信頼、個人的相対的剥奪と弱い相関が見られた。同時手番型の結果については当日発表予定している。
(休憩10分)
15:00-15:40 中川令実(関西学院大学大学院文学研究科M1)
顔識別における単眼優位性効果のメカニズム
私たちは視覚情報が左右いずれの眼から入力されたか(由来眼;eye of origin)を意識的に認識することはできない.両眼からの神経信号は,視覚経路の初期段階では分離されているが,大脳皮質における視覚処理の初期段階で統合されるためである.しかし,この由来眼の情報がより高次な認知処理に影響することを示唆する知見がいくつか報告されている.例えば,Gabay et al.(2014)は2つの画像が同じ眼に連続して呈示される場合に,異なる目に呈示されるよりも異同判断のパフォーマンスがよくなることを報告している.興味深いことに,この単眼優位性効果は顔画像に対してのみ生じるとされている.本研究の目的は,この顔識別における単眼優位性効果の具体的なメカニズムを明らかにすることであった.ステレオスコープを用いて正立あるいは倒立の顔画像を左右一方の眼に呈示し,連続して呈示された画像が同じ顔か異なる顔かを判断させた.その結果,先行研究と同様に,連続する顔画像が同じであると判断する場合には同じ眼に呈示される方が,顔画像が異なると判断する場合には異なる眼に呈示される方が,より高いパフォーマンスを示した.これは顔画像が正立である場合と倒立の場合の両方において見られた.さらに,モデリングの手法をもちいて,このパフォーマンスの促進がどのような心的プロセスの変化によるものかを検討する.
(休憩10分)
第2部:招待講演
15:50-17:20 難波修史さん(理化学研究所 情報統合本部心理プロセス研究チーム研究員)
感情研究の概観と感情語用論への移行
発表者は主要な感情に関する理論的立場を4つ紹介する。その骨子を簡単に説明した後、それらの最新理論とそれを支持する方法論を簡単に概観する。さらに言語哲学領域の理論 (言語行為論) と感情を接続することで、感情を多元的に説明することを目指した感情語用論 (Theory of Affective Pragmatics) を紹介する。それらの理論を俯瞰して咀嚼したうえで、発表者がたどり着いた場所は「感情などもういらぬ」という結論であった。本質主義を脱した我々のたどり着く先に「感情心理学」は残らないのか。感情表情の科学が行きつく末を議論したい。